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 民衆について知られることは、どんな場合にも、彼等が詩的精神の所有者であるということである。この意味から言えば、世に民衆ほどにも、真に詩を愛するものはない。ただ彼等は、教養的に素質のない子供であって、真の高いもの、立派なもの、美しいものを理解し得ない。彼等は永遠に稚気芬々ふんぷんたる子供であるから、いつも詩的精神の中に於ける、最も低級のもの、最も愚劣のものをよろこぶのであるしかもいかなる場合に於ても、民衆が悦ぶものは詩的精神である。詩的精神以外の、どんな芸術も彼等は求めようと思っていない。詩そのもの! 民衆が欲するものは、常にただそれだけだ。
 されば民衆によって読まれる文学は、常に必ず詩的精神のある文学である。例えば恋愛、人道、冒険、怪奇等の、すべて倫理感や宗教感に本質しているところの、抒情詩じょじょうし的、もしくは叙事詩的ロマンチシズムの文学である。試みに今日世界に於て最も広く読まれている文学が、だれの何の作であるかを考えてみよ。芸術的高級の作品としては常にユーゴーとトルストイである。そして特に『レ・ミゼラブル』と『復活』である。あるいはまたジューマである。バルザックである。到るところに、常に民衆によって読まれるものは、倫理感や宗教感を高調している文学である。抒情詩的もしくは叙事詩的陶酔感をあたえるところの浪漫主義的傾向の文学である。民衆は客観的芸術を欲しない。彼等の常に欲するのは、情熱的たる主観主義の文学であり、詩的精神のある文学である。
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