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 それ故に吾人ごじんは、民衆に対して二つの別な感情――愛と軽蔑と――を、同時に矛盾して持たざるを得ないのである。彼等は「善き素質」を持ちながら、しかも「しき境遇」に育っている。一方から考えれば、彼等ほどにも詩を愛し、詩を尊敬している種属はなく、しかも一方から観察すれば、彼等ほどにも詩を冒涜ぼうとくし、詩を理解しない種属はないのだ。故に正義は、彼等に対して価値を教え、より高き内容に於けるところの、真の芸術的な詩を教えてやることに存するのだ。我々の教育は、民衆からそのセンチメンタリズムを殺すのでなく、逆にそれを高くかして、より程度の高い山頂に導くのだ。
 故にこの点の結論で、吾人は全くロマン・ローランと一致する。ロマン・ローランによれば芸術の健全な発育は、常に民衆によってのみ、民衆的な精神によってのみ、建設されねばならないというのである。この思想は正しく、真理の立派なものを有している。特に就中なかんずく、日本の国情に於て適切している。なぜなら現時の日本に於て、真に詩的精神を有する者は、ひとりただ民衆あるのみだから、そのあらゆる稚気と俗臭にかかわらず、民衆は常に健全であり、芸術の正しき道を理解している。彼等は指導によって善くなるだろう。然るに日本の文学者等は、素質的に何物も持っていない。単に詩ばかりでなく、芸術的良心すらも持っていない。そして日本の文壇と思潮界は、このノンセンス等によって支配されている。救いがたいかな! 吾人はむしろ彼等を捨て、民衆の群に行かねばならぬ。民衆のみが、実に新しき日本の文学と文明を創造するのだ
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