故に詩人の資格たるべき方程式は、
[#ここから横組み]主観者(生活者)+客観者(芸術家)=詩人[#ここで横組み終わり]
で無ければならず、かつその主と客との
数値はできるだけ同等でなければならない。古来すべての偉大な詩人は、この調和に於て完全であり、かつ二つの数値を、共に多量に有していた。(それの数値が大であればあるほど、二者の加算たる和が大きくなる。)例えば*
芭蕉や、ゲーテや、ニイチェや、ランボー、李太白やが、
悉く皆そうであった。彼等は一方で熱烈なる生活者であり、人生の夢を追って一貫した詩人でありながら、一方には常に純粋な芸術家で、表現に苦心し、観照に徹しようとした真の芸術家であったのだ。
実にもしそうでなかったら、いかなる価値ある作品も、彼等によって残されずにしまったろう。されば要するに詩人とは、生活者と芸術家との混血児で、しかも両者の血を多量に受けた、矛盾の中の美しい調和である。
* 芭蕉は10の生活者と10の芸術家との、完全に調和した詩人である。然るに彼の亜流者等は、師から芸術至上主義の一面を見、単にその点のみを学んだ為、蕉門俳句をして後世の悪風流に堕落させた。
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