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 こうした自然主義の文学論が、根本に於て詩と両立できないもの、否まさしく詩の讐敵しゅうてきであり、詩的精神の虐殺者であることは言うまでもない。だが我々は、文学の主張について聞くことなしに、実の作品について観察しよう。何となれば芸術は、多くの場合に作品と主張とが一致せず、時に全く矛盾する場合がすくなくないから。そして自然主義の文学が、実に正しくその通りであった。例えばあのゾラを見よ。モーパッサンを見よ。ツルゲネフを見よ。果して彼等の作品に主観がないか。反対にむしろ、倫理感や宗教感が強すぎるほどではないかすべて彼等の作品は、熱烈なる主観によって、何物かの正義を主張し、社会の因襲に対してきばをむいてる、憎悪ぞうおはげしい感情で燃焼されてる。
 この不思議な矛盾した文学、自然主義について少しく語ろう。仏蘭西フランス十九世紀に起ったこの文学運動は、正しく浪漫派への反動であり、時代思潮の啓蒙けいもう運動を代表している。何よりも彼等は、浪漫派の上品な甘ったるさと、愛や人道やに惑溺わくできしている倫理主義を、根本的にきらったのである。彼等は当時の科学思潮と唯物観とを信奉して、ひとえに懐疑的態度を取り、前代浪漫派の楽天観に反対した。そしてこのニヒリスティックな人生観から、社会のあらゆる道義観や風俗に挑戦ちょうせんし、故意に人生の醜悪を描き、人間性の本能を高調し、隠蔽いんぺいされたものを引っぺがし、性の実感的卑猥ひわいを書き散らした。
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